才女、ロバータ・フラックの歴史を俯瞰する素晴らしいタイトルの登場!
ハワード大学で音楽を学んだロバータ・フラックは、ピアニストのレス・マッキャンによって見出され(自身のアルバム『Much Less』で「Roberta」という曲を収録させている位の入れ込みよう)、アトランティック・レコードより69年にデビュー・アルバム『First Take』をリリースします。。レスは「ロバータの声は、私のあらゆる感情に触れ、揺さぶり、捉え、突き動かす」と語っています。優しく包み込むような歌声に、クラシック音楽の素養、そしてソウル、ジャズ、フォークを融合させた独自の音楽スタイルで、レスのみならずあらゆる人々を魅了し続けたロバータ・フラック。そんな彼女のプロショット映像集です。
まず最初はロゴが真ん中に入りますが超が付く程素晴らしい映像、ジャズ史上空前のヒット、レス・マッキャンのモントルー・ジャズ・フェスでの演奏「Compared To What」。『First Take』に収録されており、ロバ―タのヒット曲「Feel Like Makin' Love」の作者ユージン・マクダニエルスが作った曲です。「どんな大義でそれを正当化しようとしているの?」とロバータが疑問を呈し、戦争を止めさせるべく歌います。
71年クリント・イーストウッドが監督したサイコスリラー映画『恐怖のメロディ』で、彼女の『First Take』収録の「The First Time I Ever Saw Your Face」が採用され、72年のビルボードチャートでナンバーワンとなり風向きが大きく変わります。更に73年には最優秀レコード賞、74年に「Killing Me Softly With His Song」もナンバーワン、そして最優秀レコード賞を2年連続で取る快挙を成し遂げます(他にはU2だけ))。
このように躍進するロバータですが、それらと前後する時期に寵愛するダニー・ハザウェイと大変素晴らしいアルバムを制作、リリースしています。その頃のライブ映像が『Double Exposure』。まずアレサ・フランクリンのカバー、作曲は彼女の夫ロニー・シャノン、チャカ・カーンがプリンスとの共演でカバーしている「Baby I Love You」。『Roberta Flack & Donny Hathaway』に収録されています。そして『ウエストサイド物語』から「Somewhere」。出世曲「The First Time Ever I Saw Your Face」は、ダニー・ハザウェイのバンドをバックにロバータが美しいピアノと共に朗々と歌います「出会って初めてあなたの顔を見たら、朝日のような、お月様や星々で私の世界を飾ってくれたような、そんな気がした、それまでは暗闇だけの何もない世界に生きていたのに」。そしてファンキー過ぎるダニーの「The Ghetto」のジャム。『Live!』での動く彼らの姿が刻印さいれているということになります。ユージン・マクダニエルスのニューソウルの名盤『Outlaw』にも収録されている「Reverend Lee」はロバータのセカンド『Chapter Two』に収録しています。
尚この時期のライブがサウンドボード録音で楽しめる名盤もリリースされております。
ロバータ・フラックとダニー・ハザウェイ / Live 1971 - 1972 (1CDR)
https://purpletown.buyshop.jp/items/100472016
72年ジャズ・ベーシスト、スティーヴ・ノボセルと離婚(彼との子供はいなかったようですが、後にボビー・ブラウンやマイルス・デイビス等とのレコーディングを行っているバーナード・ライトを養子に迎えています)。その72年のFlip Wilson Showでは(真ん中にロゴが入ります)ラルフ・マクドナルド作、75年にグローヴァ―・ワシントン・ジュニアに提供され大ヒットとなった「Mr. Magic」を既にロバータが歌っていることに衝撃を覚えます。そして73年の『Killing Me Softly』に収録されるレナード・コーエンのカバー「Suzanne」もリリース前に披露されています。そしてマイク・ダグラス・ショウではトラッド曲「Freedom」の感動のパフォも収録。
74年、フェミニズムをテーマにした子供向けTV特番『Free To Be... You And Me』からロバータ・フラックとマイケル・ジャクソンによる「When We Grew Up」のMVも収録しています。「私は自分の見た目が好きだし、あなたは小さくて素敵。わざわざ変わる必要なんてない」。個性を大事にすることを諭します。ロバータの優しさ、マイケルのピュアさをとても感じさせてくれます。
70年代中期のロバータの活躍の裏で、病に苦しむ青年がいました。それが天才ダニー・ハザウェイです。しかし彼は77年ロバータの『Blue Lights In The Basement』収録の「The Closer I Get To You」で復活、その勢いで二人名義のセカンド・アルバム制作へ着手します。79年1月13日、ダニーはプロデューサー兼ミュージシャンのエリック・マーキュリー、ジェイムス・エムトゥーメらとレコーディングセッションを行います。ハサウェイは歌は素晴らしかったが、非合理的な行動を取り、偏執的で妄想的になっているようだったと彼らは語っています。エムトゥーメによると、ダニーは白人が彼を殺そうとしており、彼の音楽と声を盗む目的で彼の脳に機械を接続したのだと言っていたと語っています。ダニーのその種の行いを考慮して、マーキュリーはレコーディングセッションを続けることはできないと判断、セッションを中止し、ミュージシャン全員が家にとりあえず帰ったと述べています。数時間後、ダニーはニューヨークのエセックス・ハウス・ホテルの15階にある自室の窓の下の歩道で死亡しているのが発見されます。 バルコニーから飛び降りたと報じられました。ホテルの部屋のドアは内側から施錠され、窓ガラスは慎重に外されており、争った形跡はなく、捜査官はダニーの死は自殺であると結論付けました。しかし後にダニーの妻や友人は事故死だったと語っています。ロバータはダニーの死に打ちのめされましたが、翌80年『Roberta Flack Feat. Donny Hathaway』に2人で完成させたデュエット2曲を収録しました。マーキュリーによると、ダニーの最後のレコーディングは、マーキュリーがスティーヴィー・ワンダーと共作した「You Are My Heaven」だったと語っています。もう一つの曲「Back Together Again」の後亡くなったという説もあります。
そのアルバムを受けてのライブです。ダニーは天国で見守っています。彼の代わりにこの後女性とのデュエットでヒット曲を連発するピーボ・ブライゾンがロバータの相手をしています。そしてバックコーラスの一人としてソロ・デビュー前のルーサー・ヴァンドロスがいます。
正にダニーに捧ぐ、と言えるライブ、演奏曲もそのアルバムからばかりです。どれも名曲且つここでしか聴けないものが少なくないのでこの映像収録がこのDVDRのハイライト、と言えるでしょう。まずアレサ・フランクリン、マドンナ等のバックコーラスをしているグウェン・ガズリー作「God Don't Like Ugly」のゴスペルとロックの融合が1曲目。好きな男性が実は既婚者だった、その仕打ちを神はお金で解決させるつもりよ、そう強気で歌う、男性への先制パンチ曲です。そして名曲「Only Heaven Can Wait」。「愛は待っても叶うことはない、愛が終わらないと心は癒されない、でも天国だけは愛を待ってくれるの」。先のグウェン・ガズリーが恐らくコーラスでいるのではないでしょうか。スパンキー・アンド・アワ・ギャングをプロデュース、正直あまり知られていないスチュワート・シャーフ作の「Disguise」も隠れ名曲で嬉しい披露です。
72年にリリースしたもののヒットしなかったロリ・リーバーマンのオリジナルを飛行機内で偶然聴いたロバータが取り上げ大ヒットとなった「Killing Me Softly With His Song」。文字通り彼の歌にメロメロになってしまう、という歌をロバータが歌うことでリスナーをメロメロにしてしまったそんな橋渡し。歌詞ではギターを弾くのが「彼」なのですが、ロバータはあえてその歌詞を変えず、心の中では、ピアノを弾く「彼」と思って歌っていた、のではないかと。
「明日も愛してくれるの?」、ダニーとの名曲「Will You Love Me Tomorrow」の返歌、それが「You Are My Heaven」と言えるのではないでしょうか。「朝起きたら天使が僕に、直ぐ近くに天国を見つけるよ、って囁いたんだ。だったらそれは君のことだよね、朝の天国は、ねえ天使?僕の腕の中で、そして人生において戯れている君のことさ。傍にいてくれるなら僕のこの決定を誰も変えらやしれない。僕の恋人、私の天国、今はキザに歌わせて、君は僕だけのものなんだ」。「もし天使があなたに毎朝そう囁いてくれたら、本当最高よ、レアだわ。朝起きたと同時に永遠に愛してくれるって常にわからせてくれるなんて。あなたの愛、心の痛みも私は抱いているからね」。スティービー・ワンダー作、これほどのドリーミーな曲はそうはありません。ダニーの代わりに歌うピーボ・ブライゾン、少し間違えてますが、流石のデュエットの名手、素晴らしいです。
「冬から春へ、暗闇でいちゃいちゃしている恋人たちを見ていたら、したくなるの」。ユージン・マクダニエルス作の「Feel Like Makin' Love」。時折後ろで(特にギター・ソロの部分で)ルーサー・ヴァンドロスが「そんな時は、したくなっちゃうよー」とボーカルで絡んできます。ちょっとうざいけど大変貴重なライブ・バージョンです。
作詞はキャロル・キングの元旦那、ジェリー・ゴフィン、作曲はマイケル・マッサー、結果ホイットニー・ヒューストンの「Saving All My Love For You」のコンビが、絶対の名曲となるべく収録させた「Stay With Me」。「あと一日だけ一緒にいて。それが私の人生に永遠に残るから」。ロバータの気持ちを分かった上での制作に違いありません。
「一緒に住まない?ハッピーになるに違いない」と歌う「Why Don't You Move In With Me」は『Blue Lights In The Basement』収録。
「僕はじっと待っていた、君が居なくて寂しかった。私もよ」。「Back Together Again」はレジー・ルーカス、エムトゥーメ作の心躍らすアーバンなダンスチューン。スタジオ曲ではダニーのボーカルが躍動していて無敵状態ですが、その代わりのピーボも、負けじと頑張って歌っています。そしてロバータが主導権を得てライブ全体を引き締め、クローズへと導きます。ピーボがロバータの後ろから手を伸ばし支えながら、しかしロバータはそれを感じつつも堂々とステージを後にします。
81年Solid Rockでは、夢のデュエット、息がぴったりディオンヌ・ワーウィックとの「Killing Me Softly With His Song」、そして93年のアーセニオ・ホール・ショウでは、今までの珠玉の名曲をメドレーで、そしてその時のアルバム『Set The Night To Music』からスタイリスティックスのカバー「You Make Me Feel Brand New」を披露しています。
Compared To What
Voice Of America/Radio Program Groovy Girl! (1970)
intro
Baby I Love You (Roberta Flack & Donny Hathaway)
Somewhere (Roberta Flack)
The First Time Ever I Saw Your Face (Roberta Flack)
The Ghetto (Donny Hathaway)
Reverend Lee (Roberta Flack & Donny Hathaway)
Double Exposure (1972)
Mr. Magic
Flip Wilson Show (1972)
Freedom
The Mike Douglas Show (1972)
When We Grew Up (w/Michael Jackson)
Free To Be... You And Me (1974)
God Don't Like Angry
Only Heaven Can Wait
Disguises
Killing Me Softly With His Song
You Are My Heaven
Feel Like Makin' Love
The First Time Ever I Saw Your Face
Stay With Me
Why Don't You Move In With Me
Back Together Again
Roberta Flack Live (1980) Feat. Peabo Bryson & Luther Vandross
Killing Me Softly With His Song (w/Dionne Warwick)
Solid Rock (1981)
Killing Me Softly With His Song
Feel Like Makin' Love
Tonight I Celebrate My Love
The First Time Ever I Saw Your Face
Where Is The Love
Making Love
You Make Me Feel Brand New
The Arsenio Hall Show (1993)
Pro-Shot
109min.